核兵器運用部隊の活動記録を含む米空軍第313航空師団の年次報告書について

 

History of the 313th Air Division (1 March 1955 – 30 June 1964)

米空軍 第313航空師団 歴史報告書

 

嘉手納基地に配備された米空軍の第313航空師団の歴史報告書(1955年から1964年)は、米国・アラバマ州にあるマックスウェル空軍基地にある空軍歴史研究所(Air Force Historical Research Agency) にて保管されていたものです。

 

第313航空師団は、1953年7月の朝鮮戦争の休戦協定後の情勢に対応した部隊再編の一環の動きの中で、沖縄戦直後から沖縄に配備された第20航空軍の後継として、1955年3月にフィリピン・クラーク基地から嘉手納基地に配備されました。同師団の指揮下に入る第18戦闘航空団と第51防空航空団は、韓国から移ってきました。

同師団の歴史報告書は、年2回(1月から6月までの前半、7月から12月までの後半)の発行形態となっています。そのほとんどの歴史報告書は、3巻から構成されています。1巻が歴史記述となり、2巻と3巻は、1巻に脚注としてあがった文書を全文掲載しています。1巻は、2つないし3つ(ときには6つ)の章で構成されています。第1章には、各巻共通して「組織と任務(Organization and Mission)」について記載されています。第2章以降は、主にその対象期間の出来事について記載されています。

 

主な内容は、以下の通りです。

 

1. 伊江島の射爆場建設の経緯

・新たな射爆場の必要性が生まれ、その設置先とされた伊江島での土地接収の経緯が記載。

    • 1955年後半(第2章:琉球における土地問題 “the Land Problem in the Ryukyus”)
    • 1960年前半(第3章:伊江島射爆場とスクラップ収集の問題 “The Ie Shima Bombing Range and the Problem of Scrap Metal Collection”)
    • ・伊江島での射爆訓練による被害調査にかかる記述は、1961年後半(第2章:伊江島―深まる痛み “Ie Shima-the Festering Sore”)に収録されています。

 

  • 2. 核兵器の貯蔵管理部隊の活動
    • ・核兵器を貯蔵管理する部隊の活動が、1957年前半(第4章:非通常兵器への支援 “Support of Unconventional Weapons”)の報告書に登場します。

 

  • 3. 台湾海峡危機と嘉手納基地
    • ・台湾海峡危機への嘉手納基地所属の部隊の対応が、1958年後半(第3章:台湾海峡危機 “the Taiwan Straits Crisis”)の報告書に登場します。

 

  • 4. メースB発射基地の建設
    • ・中国を標的とした巡航ミサイルのメースB(前身のマタドール・ミサイル)の配備と基地建設については、1960年後半(第3章:マタドールとメース誘導ミサイル計画 “the Matador-Mace Guided Missile Program”)と1963年前半(第3章:第498戦術ミサイル・グループ “the 498th Tactical Missile Group”)の報告書に記載されています。

 

  • 5. 墜落事故への対応
  • ・石川・宮森小学校へのジェット機墜落事故を記載した1959年前半(1959年1月から6月)の報告書の1巻は、入手できていません。墜落事件を扱った章にある脚注に対応する関連文書が収録されていると思われる3巻もまた、未入手のままです。
  • ・他の墜落事故については、事故そのものを記載したページは削除される中で、被害者への補償関連が分かります。具志川村川崎(現在のうるま市)でのF-100D戦闘爆撃墜落事故(1961年12月7日)と嘉手納村屋良地区(現在の嘉手納町)KB-50J空中給油機の墜落事故(1962年12月20日)などが登場します。

 


TOP