2014年11月12日

新しい島嶼学

2014年12月7日 シンポジウム『島嶼型ランドスケープ・デザイン:多角的アプローチによる考察』 開催

国際沖縄研究所 IIOS公開シンポジウム2014

島嶼型ランドスケープ・デザイン:多角的アプローチによる考察

 


 

【日時】
平成26年12月7日(日) 15時から19時
【場所】
琉球大学50周年記念館 2階多目的ラウンジ
【主催】
琉球大学国際沖縄研究所「新しい島嶼学の創造」プロジェクト
【概要】
小さな島の景観は、自然・文化・人々の生活や社会の有り様など様々な側面を反映して形成されます。すなわち、島にとって「ランドスケープをデザインする」ことは、これらを考慮した地域社会をデザインすることでもあるのです。本シンポジウムでは様々な分野から気鋭の若手研究者・専門家が集い、沖縄をはじめとする島嶼のランドスケープ・デザインのあり方を多角的アプローチによって考察します。
*予約不要・参加無料

 

【プログラム】

  • 飯田晶子(東京大学 工学系研究科・助教)
  • 「パラオの文化的景観にみる自然共生」
  • ミクロネシア諸島のパラオ共和国は、年間10万人を超える観光客が訪れる南国の楽園である。他方で、パラオの伝統的な集落では、長い年月をかけて、狭小かつ閉鎖的な島嶼環境に適合する中で築かれてきた文化的所産としての景観が成立している。自然共生、防災・減災、持続可能性をキーワードにパラオの文化的景観を読み解き、それを現代に活かす試みを紹介する。
  •  
  • 波多野想(琉球大学 観光産業科学部・准教授)
  • 「島嶼景観のダイナミズム-景観の複合性からみた金門島の特殊性」
  • 島嶼の景観は、変化(Change)の緩徐性と変容(transformation)の急進性を併せ持つ特殊な存在である。それは一方で完結した空間であるが故に固有性をもつものとして長い時間をかけて緩やかに変化し、他方で外部との相互作用の仕方によってドラスティックに変容する可能性をもつものである。本報告では、そのような特殊性を伝統的集落、華僑によってもたらされた華洋建築(教育施設)群、軍事拠点化によって島内各地に設置された軍事施設群、などによって重層的かつ複合的に景観が構成されている金門島を例に考えていきたい。
  •  
  • 小野尋子(琉球大学 工学部・准教授)
  • 「生活景と開発」
  • 沖縄の集落空間が有する御嶽や樋川、井戸などの景観資源。これらの共有空間は、住民が集落祭祀を世代間で継承していきながら、それによって自然に引き継がれる禁忌意識によって、慣習的に保全・維持管理されてきた。本報告では、そのような場所が、戦後の都市化や資源・エネルギー循環の広域化の中でどのように改変または整備されてきたのかの事例を紹介し、現在の土地利用規制に関わる課題について問題提起をする。
  •  
  • 陳碧霞(琉球大学 農学部・助教)
  • 「防災機能に備えるランドスケープ・デザイン学-琉球列島を事例として-」
  • 『文化的景観』と『レジリエンス』の2つのアプローチから、自然災害と共存しながら島嶼型自然と調和するランドスケープ・デザインモデルについて述べる。東アジア地域において、風水の思想に基づいて作りあげられたランドスケープは、まさに自然災害を防ぐための景観である。古来より周囲の自然環境を読み、判断し、さらに欠けている部分を植林などで補うという手法を使用し、より理想的な住居環境を追及するために風水が利用されてきた。琉球王朝時代から造成されてきた屋敷林や海岸防潮林は島社会に適応しており、自然際学に強い集落景観デザインとして再評価すべきである。
  •  
  • 神谷大介(琉球大学 工学部・助教)
  • 「島嶼地域における社会変化と災害リスク」
  • 離島苦に対し、観光振興や交通利便性の改善、水道広域化等の種々の政策がとられている。一方で、過疎・高齢化が進行している島もある。本発表では、観光振興がもたらす渇水リスクへの影響、過疎高齢島嶼地域における災害脆弱性と対応力、災害による交通途絶と対応力、等について、島嶼地域が抱える課題を紹介する。その上で、計画における平常時と災害時の連続性、リスクマネジメントや公平性の観点から対応策について検討する。
  •  
  • 滝澤玲子(環境省 やんばる自然保護管事務所・城跡自然保護官)
  • 「世界自然遺産「奄美・琉球」の登録と地域の持続可能な発展に向けて」
  • 亜熱帯照葉樹林広がる沖縄島北部地域は、世界でもここにしかいない固有種や絶滅の恐れのある希少種、多種多様な生き物が生息し、現在、奄美大島・徳之島・西表島とともに世界自然遺産「奄美・琉球」という候補地になっている。一方で、この森林は、人がその資源を活用し、土地の利用を行ってきた場所であり、今も残る祭事や生活文化は自然と深いつながりを持つ。世界自然遺産に向けては、この森林について、遺産の価値の保全と人による持続可能な利用をどのように両立させていくか考えていく必要がある。
  •  
  • 大城幸代(NPO法人 沖縄の風景を愛さする会・理事)
  • 「NPO風愛会と風景学習」
  • NPO法人沖縄の風景を愛さする会では、沖縄の風景・景観を保全、育成するため、市民のまちづくり活動のサポートや、自治体の風景づくり事業等を応援している。現在、風景づくりを担う人材の育成活動の一環として、県内の6小学校の児童を対象にした「風景学習」を行っている。今回は担当した糸満市立糸満小学校を中心に風景学習の様子と、風愛会の取り組みをご報告したい。

 

islands141003-01 islands141003-02


TOP